出向(第14条) of 労働契約法のポイント

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出向(第14条)

(出向)
第十四条 使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。

出向とは

 広い意味での出向には、①出向元に籍を置いたまま出向先に出向する(一般的には、一定期間後に出向元に戻る)タイプの「在籍型出向」と、②出向元との雇用関係をいったん終了させ、出向元から出向先に移籍する(出向元には戻れない)タイプの「移籍型出向」の2つのタイプがあります。

 この労働契約法第14条で規定されている「出向」とは、①の「在籍型出向」を指しており、出向元である使用者と出向を命じられた労働者との間の労働契約関係が終了することなく、出向を命じられた労働者が出向先に使用されて労働に従事することをいいます。

趣旨

 出向は、大企業を中心に広く行われていますが、出向に関するトラブルが訴訟に発展して、企業の出向命令が権利濫用となるかどうかが争われた裁判例も多数見られます。また、出向は、出向元から出向先へ労務の提供先が変わり、出向後の労働条件や処遇などが大きく変わる可能性があるため、労働者への影響も大きいと考えられます。そこで、企業の権利濫用にあたる出向命令のトラブルを防止する必要があります。

 このため、労働契約法第14条では、権利濫用に該当する出向命令の効力について規定しています。

<参考> 出向に関する裁判例

① 川崎製鉄事件(神戸地裁平成12年1月28日判決)

「本件出向のように、就業規則や労働協約において、業務上の必要があるときには出向を命ずることができる旨の規定があり、それらを受けて細則を定めた出向協定が存在し、しかも過去十数年にわたって相当数のY従業員らが出向命令に服しており、さらにXらの属する労働組合による出向了承の機関決定もが存在する場合には、出向を命ずることが当該労働者との関係において、次のような人事権の濫用にわたると見うる事情がない限り、当該出向は法律上の正当性を具備する有効なものというべきである。」
「使用者が出向を命ずる場合は、出向について相当の業務上の必要性がなければならないのはもちろん、出向先の労働条件が通勤事情等をも付随的に考慮して出向元のそれに比べて著しく劣悪なものとなるか否か、対象者の人選が合理性を有し妥当なものであるか否か、出向の際の手続に関する労使間の協定が遵守されているか否か等の諸点を総合考慮して、出向命令が人事権の濫用に当たると解されるときには、当該出向命令は無効というべきところ、前記で認定した事実のもとでは、本件出向命令には、(中略)右の権利濫用事由を認めるに足りない。」

② 新日本製鐵(日鐵運輸第2)事件(最高裁平成15年4月18日第二小法廷判決)

「Yが構内輸送業のうち鉄道輸送部門の一定の業務をA社に委託することとした経営判断が合理性を欠くものとはいえず、これに伴い、委託される業務に従事していたYの従業員につき出向措置を講ずる必要があったということができ、出向措置の対象となる者の人選基準には合理性があり、具体的な人選についてもその不当性をうかがわせるような事情はない。また、本件各出向命令によってXらの労務提供先は変わるものの、その従事する業務内容や勤務場所には何らの変更はなく、上記社外勤務協定による出向中の社員の地位、賃金、退職金、各種の出向手当、昇格・昇給等の査定その他処遇等に関する規定等を勘案すれば、Xらがその生活関係、労働条件等において著しい不利益を受けるものとはいえない。そして、本件各出向命令の発令に至る手続に不相当な点があるともいえない。これらの事情にかんがみれば、本件各出向命令が権利の濫用に当たるということはできない。」

内容

 労働契約法第14条は、使用者が労働者に出向を命ずることができる場合であっても、その出向命令が権利を濫用したものと認められる場合には、無効となることを明らかにしています。

 そして、その出向命令が権利濫用であるかどうかを判断するには、出向を命ずる必要性や対象労働者の選定に係る事情など諸事情が考慮されます。

 なお、「使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において」とは、労働契約を締結することによって、直ちに使用者が労働者に出向を命ずることができるわけではありません。それは、その労働者の労働契約やその労働者が適用される就業規則等の内容によるためです。

 実際にどのような場合に使用者が出向を命ずることができるのかについては、個別具体的な事案に応じて判断されます。

<参考> 「出向を命ずることができる場合」に関する裁判例

○ 新日本製鐵(日鐵運輸第2)事件(最高裁平成15年4月18日第二小法廷判決)

「原審の適法に確定した事実関係によれば、(1)本件各出向命令は、Yが製鉄所内の構内輸送業のうち鉄道輸送部門の一定の業務を協力会社であるA社に業務委託することに伴い、委託される業務に従事していたXらにいわゆる在籍出向を命ずるものであること、(2)Xらの入社時及び本件各出向命令発令時のYの就業規則には、『会社は従業員に対し業務上の必要によって社外勤務させることがある。』という規定があること、(3)Xらに適用される労働協約にも社外勤務条項として同旨の規定があり、労働協約である社外勤務協定において、社外勤務の定義、出向期間、出向中の社員の地位、賃金、退職金、各種の出向手当、昇格・昇給等の査定その他処遇等に関して出向労働者の利益に配慮した詳細な規定が設けられていること、という事情がある。
 以上のような事情の下においては、YはXらに対し、その個別的合意なしに、Yの従業員としての地位を維持しながら出向先であるA社においてその指揮監督の下に労務を提供することを命ずる本件各出向命令を発令することができるというべきである。」

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